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ITスキルを伸ばそう

 小中学生のなりたい職業の上位に近年はプロスポーツ選手よりもITエンジニアプログラマーが上に入る様になりました。IT起業家の世界を動かす姿や株式上場して巨万の富を得ることができた姿を見て憧れたり、実際に高給の職業として知られるようになってきたことが考えられます。この記事を書いている私もインターネットブームが来る前から30年近くITエンジニアを目指して勉強して仕事をしてきました。日進月歩のIT業界で生きていくために常にITスキルを磨いています。具体的にITスキルとは何か、どうしたら身につけられるのかについて解説します。

ITスキルを身につける

 改めて言うまでもなく製造業ではITスキルは必須です。製造業は従来から理工系が向いているとされている業界で早くからコンピューターを使って設計したり、工場の生産設備を制御したりしてきましたが効率をよくするために更に高度化することが求められています。工場の自動化や半導体や自動運転車の開発などが最新ITの主戦場です。
 インターネットやITが日常生活に深く浸透した現在ではITとは無縁と考えられてきた業界でもデジタル化(あるいはDX)と言い出しています。農林・水産、医療・介護、金融が従事者のITスキルや法的な制限などからIT化が遅れている業界ですが遅れを取り戻そうと追い上げ中です。これからこれらの業界に就業する場合にはIT担当を任されるかもしれません。なお、ITは理工系と思われがちですが、日常生活とITが密接になった現在では文系も活躍の場が増えています。例えば、新しいところではプロンプトに文章で指示をして結果を導き出す生成AIを初めとした言語モデルを扱うような場面です。日常生活をデジタルの力でよくしていこうという動きはエンジニアリング(工学)によってもたらされます。モノとモノを組み合わせてソフトウェア技術によってサービスを作り上げていく仕事は文理問わず能力を活かせるでしょう。そしてITプロジェクトでは予算・要員規模が大きくなるとヒト・モノ・カネと情報のリソース管理ときちんとしなければならなくなります。そして経営陣や関係者への説明のための資料作成の比重も大きくなるのでわかりやすく言語化する能力が重宝されます。

 ITエンジニアの利点として、身体能力との相関が低いことがあります。パソコンの前で仕事をするイメージもあるように年齢にかかわらず仕事を続けられる傾向があります。現在では労働法規を遵守していますが以前は遅れを取り戻すために作業時間が長くなって徹夜が多く休みも取れないようなブラックな会社が多くて過酷な職業だったこともあります。その当時のイメージではプログラマーの35歳定年説が実しやかにささやかれていたものです。オフシェア開発と言ってプログラムを作成する作業(コーディング)を賃金の安い国(海外)へ発注するような動きもありましたがコミュニケーションのロスが多いことや品質に問題があることからITエンジニアを雇用して自社内で開発も完結させる内製化がトレンドです。

 ITエンジニアの将来性に関しては今後も全産業のデジタル化が進んでいくことが見込まれ、特にAI、ビッグデータといった先端技術分野が有望です。特に人材不足の分野は「プロジェクトマネージャー」と「セキュリティ」です。高ストレスや高度なスキルが必要とされることが人材確保の足かせになっています。
 ところで政府は人生100年時代をスローガンに企業に70歳まで雇用するように求めていますが、プロスポーツ選手といかなくても現場系の仕事では筋力もしくは手先の器用さが求められますので引退して監督(親方)になるか他の仕事を探すことになります。高齢になっても働くことが可能な事務系の仕事が年々減少していますので現場系職種から転職する場合にはIT資格と士業資格など複数持ちでないと好条件の仕事には就けないでしょう。従来は採用の多かった事務系にとって変わったのがデジタル人材、ITエンジニアです。事務系の職種についている人をリスキル(リスキリング)してデジタル系の新しい技術を習得するような動きも加速しています。そうした中でOpenAIの人工知能チャットボットChatGPTを業務に取り入れる動きが話題です。

ITスキルを伸ばそう
ITスキルとは  ITスキルとはパソコンの操作(WindowsやMac)、Officeソフトによるドキュメント作成、プログラミングやインターネットに関する操作ができることを言います。
ITスキルのパフォーマンス  さまざまな習い事や技能と比較して相対的にITスキルのパフォーマンスは高いと言えます。その根拠として、ITエンジニアの平均年収が他の職種よりも高いことが統計で分かっています。
ITスキルを身につける  在学している学校の「情報」の授業、就業中の組織のIT業務を通じてITスキルを身につける方法が主となります。独学で身につけることも可能です。
ITスキルを活かす  身につけたITスキルを活かす場を探しましょう。IPAの未踏やITベンダーのコンテスト、情報通信・コンピューター系のアルバイトなどがあります。
個別ITスキルを深める  自身の専門性を発揮する分野を決めて個別ITスキルを深めます。ITスキル標準(ITSS)のレベルや組織の人事・職能等級を高めることや上位の情報処理技術者試験の合格、ベンダー資格の取得を目指します。
ITスキルを発信する  IT系の学校の卒業や資格取得でITスキルを持っていることを対外的に証明することができます。しかし、そのような人は他にもたくさんいます。保有するITスキルを発信して知名度を高めていくことで差異化します。

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ITスキルとは

ITスキル

 ITスキルとはパソコンの操作(WindowsやMac)、Officeソフトによるドキュメント作成、プログラミングやインターネットに関する操作ができることを言います。

 パソコンの操作としては電源を入れてOSを起動し、マウスやキーボードを操作しアプリを使うことが最低限求められます。パソコンにアプリをインストールしたり、システムの更新をすることも基本的な操作とみなされます。
 広く普及しているMicrosoft Officeによる資料作成のスキルとしては、文書作成のWord、表計算のExcel、プレゼンテーションのPowerPoint、電子メール・スケジュールのOutlookの基本的な操作ができることが求められます。組織によってはマクロ記述による自動化など特定の機能について活用していてその能力を問われる場合もあります。文書ではなくビジュアルを主力にしているクリエーション業務では、Adobe Creative Cloudのようなツールを使いこなして動画や写真の編集をしたり、イラストやデザイン制作、ロゴやポスターを作成することを求められます。
 プログラミングのスキルとしては、何をするのか、例えばソフトウェア開発を行うのか、Webコンテンツの制作をするのかで求められる要素が異なります。ソフトウェア開発であればJavaやC++といったプログラミング言語でコードを書くことや開発環境の操作ができることを求められます。Webコンテンツの制作をするのであれば、デザインのためにはスタイルシート(CSS)、コンテンツ記述であればHTMLやJavaScriptの記述ができること、フレームワークを使いこなせることが求められます。Webの運用管理ではCMSと呼ばれるWebコンテンツ管理システムやブログ管理システムのWordPressの操作スキル、プラグインなどのカスタマイズを求められます。
 インターネットに関する操作スキルとしては、Webブラウザを使う、ビデオ会議アプリを使う、チャットやメールを送受信するといったことができることを求められます。ビデオ会議アプリは2020年頃のテレワークの拡大で急速に導入が進んで、Microsoft Teams、Zoom、Cisco WebEX、Google Meetなどのツールが利用されています。
 仕事で求められるITスキルは何となく使えるといったレベルではありません。メール送信の誤操作、公開/非公開の誤設定によるセキュリティ事故を防ぐためにも、手順やルールにしたがって確実に使いこなすことを求められます。

 私が思いついたこと書き出しただけでも多岐にわたっていて大変そうに感じたかもしれません。様々な要素があって極めようとするとどれもが難しいです。それぞれにプロフェッショナルな人達がいますのでITスキルとひとくくりに言ってしまっていますが実際のITの仕事は分業が進んでいます。次項「ITスキルがあることを証明する」やさらに後の「個別ITスキルを深める」で取り上げますが、ITスキル標準で設定されているビジネスを進める上でのITエンジニアの専門領域では11職種・35専門分野で分類しています。
キャリアフレームワーク ITスキル標準V3 2011
出典:
ITスキル標準はやわかり-人材育成への活用-
https://www.ipa.go.jp/archive/jinzai/skill-standard/itss/qv6pgp000000buc8-att/000025745.pdf より引用

ITスキルがあることを証明する

 ITスキルがあるといってもスキルがあるかどうかを対外的に証明するには資格が確実です。
 日本では独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)のITスキル標準が政府自治体と民間を含めた産学における各種IT関連サービスの提供に必要とされる能力を明確化・体系化した指標になっています。到達度はスキル領域とスキル熟達度・知識項目といったマトリックスから確認できるようになっています。

次の11の職種が定義されています。
マーケティング、セールス、コンサルタント、ITアーキテクト、プロジェクトマネジメント、ITスペシャリスト、アプリケーションスペシャリスト、ソフトウェアデベロップメント、カスタマサービス、ITサービスマネジメント、エデュケーション
職種共通スキル項目と専門分野固有スキル項目に分かれており、各分野に習得が望ましいスキル項目が示されています。例として、職種「ITスペシャリスト」を次に示します。11の職種分すべてについては出典に挙げたITスキル標準を参照してください。
ITスペシャリスト
出典:
ITスキル標準V3 スキル領域とスキル熟達度(6)ITスペシャリスト [経済産業省,独立行政法人情報処理推進機構]
3ページ ITスペシャリストのスキル領域 より引用


ITスキル標準 達成度指標によるレベル
出典:
ITスキル標準V3 2011 1部:概要編
31ページ 図 15.レベルと評価の概念 より引用

 IPAが実施している情報処理技術者試験は職種や専門分野については一部が対応しています。

ITスキル標準 情報処理技術者試験との対応関係
出典:
ITスキル標準V3 2011 1部:概要編
36ページ 表 2.情報処理技術者試験との対応関係 より引用

 情報処理技術者試験の入門レベルの「ITパスポート試験」は年齢にかかわらず取得しておきたい資格です。試験では情報技術(IT)や管理についての出題がされるだけではなく、経営全般についての知識も問われます。出題は小問100問・四択式で試験はCBT(Computer Based Testing)方式で行われます。試験会場に用意されたパソコンを操作して正解を選ぶので特別な操作技能は要りません。もちろん筆記力は不要です。
 情報処理技術者試験に合格してもパソコンの操作がままらないと心配になるかもしれません。実務能力を評価する職業能力開発協会が行うコンピュータサービス技能評価試験(CS試験)があります。1~3級の等級がありワープロ・表計算の操作能力を指定されたビジネス文書の作成の実技と筆記で評価します。学校、パソコンスクールや企業で教育訓練を受けた後の評価試験として位置付けられています。
 ITスキルの判定には世界各国でそれぞれの試験機関があり国家資格を運用しているほか、さまざまな民間団体の検定試験、民間資格があります。CompTIA認定試験は「コンピューティング技術産業協会」という米国の団体ですが特定のベンダーに依存しないネットワーク、セキュリティ、クラウドなど各業務分野の認定資格試験を日本を含め各国で実施しています。PMP(Project Management Professional)はプロジェクトマネジメント協会(PMI:Project Management Institute)が発行するプロジェクトマネジメント知識体系(PMBOK)についての知識と技能を問う試験があります。企業が行う資格試験(通称「ベンダー資格」)は製品スキルを認定するようになっています。マイクロソフトの認定資格(MCP:Microsoft Certifications Program)、オラクルマスター、シスコ技術者認定、SAP資格、セールスフォース認定資格などがあります。製品の流行り廃りがあることや高額の必須研修を受講しなけばならない、数年ごとに更新費用が掛かるなどの制約があるため自主的な取得には不向きです。就業中に取得指示があった場合や認定技術者として転職したり独立したりする際に権威付けのために取得する人が多いようです。

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ITスキルのパフォーマンス

 ITスキルを身につける前にどれくらいのメリットがあるのか、経済的なパフォーマンスやどのように仕事に役立つかを知っておいたほうがよいでしょう。

ITエンジニアは稼げる

 さまざまな習い事や技能と比較して相対的にITスキルのパフォーマンスは高いと言えます。その根拠として、ITエンジニアの平均年収が他の職業よりも高いことが統計で分かっています。

 経済産業省の調査結果でもITエンジニアの年収平均は高いことが分かります。中でもコンサルタントの年収が高いです。偏差値上位の学生が就職先としてコンサルタントの人気が高まっています。

出典:
IT関連産業の給与等に関する実態調査結果 平成28年8月21日 経済産業省 6ページ より引用
https://warp.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/11623215/www.meti.go.jp/press/2017/08/20170821001/20170821001-1.pdf

 医師や弁護士のほうが高いという意見も出るでしょうが職業別の生涯年収、退職金や年金まで含めて考えた場合、医師とITエンジニアの平均はどちらも他の職業と比べて多い傾向にあります。しかし、確実に家業の病院を引き継げるならともかく開業医になるまでの道のりは長く厳しいです。大学・大学院、国家試験の合格と研修生に費やさなければならない年月も考慮してみてください。幼少時代からの学習塾の通塾も含め、人生におけるタイムパフォーマンスが非常に悪いです。入試や国家試験失敗のリスクがあります。そして独立・起業した場合の投資のレバレッジの大きさにも目を向けるべきです。例えば大病院に発展させた場合とIT企業を上場した場合の経済価値と社会的貢献度でより大きくなる可能性のあるのがIT企業です。情報処理技術者試験に合格できなくてもITエンジニアになることは可能ですし、ITスキルを活かせる場はITエンジニア以外にも広くあり、公務員や農林水産業など他の職種でも何かしらのリターンが得られることです。
 そして医師や弁護士もITスキルとは無縁ではいられなくなっています。情報収集や電子カルテ管理、訴訟手続きでのIT利活用スキルが必要です。そしてITを苦手にすると活動が制限されるばかりか、詐欺やマルウェア被害に遭いやすくなり情報セキュリティのリスクが高まります。ここでの話は私の見たり、聞いたりした観測範囲の感覚的な話です。ITスキルのパフォーマンスについての調査事例やデータを探したのですがなかなかちょうどよいものはありません。双子のうちの一人がIT業、もう一人が士業のケースがあればパフォーマンスの検証ができるのですが、そのように都合の良いデータはあるわけないですね。

ITスキルの発揮

 ITエンジニアの職種以外にも日常の様々なところにITが浸透しているのでITスキルを発揮することで仕事のパフォーマンスを高めることができます。店舗の情報をマメにSNSに投稿したり利用者の感想に答えてみる、商品メニューなど英語で記載したものを用意する、電子決済端末を導入するなどです。

 人事や経費を管理するためのクラウドサービスも安価に利用できるので、手書きのシフト表を止めてWebやアプリを活用すれば事務作業を効率化できます。こうしたことに着目して、解決する方法を見つけるための素養としてITスキルとビジネススキルを活かしていけます。

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ITスキルを身につける

 在学している学校の「情報」の授業、就業中の組織のIT業務を通じてITスキルを身につける方法が主となります。独学で身につけることも可能です。

就学中

 就学中であれば中学校の技術・家庭科「D 情報の技術」も高校に情報I、情報IIの授業で基礎を習います。パソコンスクールや専門学校で習うことができるほか、大学の情報学系の単位を取ることでITスキルを身につけるための学習が可能です。多くの企業では就職採用時にIT系の専門学校や大学の情報学科を卒業見込みであれば一定のITスキルがあると認められます。履歴書の資格欄でアピールすることができるように国家試験のITパスポート(合格率約60%)や基本情報処理技術者(合格率約30%)に合格をしておきたいところです。現在は資格試験のための教科書、参考書はたくさんあるのでやる気があれば独学しやすいです。情報処理技術者試験はITスキル標準V3 2011がベースなので中古の過去問題集を何冊か買って勉強するのもアリです。IPAのサイトで過去問と正解が公開されているほか、有志による講習の動画配信や過去問と解説を扱ったWebサイトやアプリもたくさんあります。

実体験を伴ったITスキルの習得

 私は実体験を伴った形でITスキルを習得することが特に重要だと考えています。就学中の子供がITエンジニアになりたがっているなら中古でもよいのでパソコンを買い与えるとコンピューターの構造や仕組みを理解するうえで良いと思います。専用の学習キットも勉強するのにはよいですが実際に社会で使われているものでさまざまな体験をするのがエンジニアとしての成長に好影響だと思います。最初に事故や事件を起こさないようにやってはいけないことを約束しておき、それ以外であればOSやアプリのインストールや分解・改造などを自由にさせてあげたいものです。学校の授業や課題以外の自由時間では興味・関心の出てきたところから徐々に広げることで無理なく、ITを苦手にならずに身につけられるでしょう。ITスキルの習得では知識を増やす、実習や課題をクリアする形で習得するのが基本の形ではあるのですが上手くできない人もいます。ITエンジニアの中でも特にプログラマーはその人に適性があるかどうかを選びます。上手くいかない点を抽出して課題として整理したり、ITの分かりにくい点を説明することも貴重なスキルです。UIデザインやアプリの改善といった仕事もあるので活躍の場を探すことが大切です。
 親目線だと子供の学校で配布されたPC・タブレットを使ってゲームや動画ばかりというのが懸念されるのですが、時間を浪費するのではなく業務的に使うように訓練すると将来役に立つと思います。例えば、毎日使用した時間と内容を報告させる。口頭で報告できるようになったらPC上で報告書を作成される。ゲームのプレイであればスコアやタイムを記録して向上させるための方法を考えさせて実践させるとか、プレイ中にゲームを面白おかしくコメントする様子を子ども自身に撮影させてハイライトの部分を親に見せるとかそういうことです。社会人の平均年収をはるかに超える収入を得ているゲーム実況動画配信者も大勢いますので才能がありそうなら配信者に挑戦してみるのもよいと思います。よくないのは漫然と時間を費やして何も得られないこと、課金額を増やしてゲーム内のキャラクターを成長させて自分には実力があると思ってしまうことです。

社会人

 社会人になってからはIT関連業務を通じた経験がスキルを身につける上で役立ちます。会社のIT部門への異動を希望するのも一つの方法です。組織の情報システム部門や情報システム子会社に就業しているなら業務経歴やプロジェクトの成果が一定のITスキルの証明になります。高度にITスキルを身につけてキャリアアップするためにはITエンジニアが同職種で規模の大きな会社もしくは責任のあるポジションに転職するのがよい形です。

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ITスキルを活かす

 身につけたITスキルを活かす場を探しましょう。IPAの未踏事業やITベンダーのコンテスト、情報通信・コンピューター系のアルバイトなどがあります。

未踏事業

 IPAの未踏IT人材発掘・育成事業は25歳未満で個人や個人グループで参加できるソフトウェア関連分野においてイノベーションを創出することを目的とした開発プロジェクトです。2023年度の公募では、7名の方がプロジェクトマネージャー(PM)を担当し、採択されたクリエータには時給換算で1900円/時の支給があります。プロジェクトの成果が優れていると認定されるとスーパークリエーターとして選出されます。

アルバイト

 高校生以上であればIT系のアルバイトがよいでしょう。プログラミング、プログラムのテスターや動画編集、Webコーディングのような仕事があるはずです。大学生や専門学校生向けで人とかかわるのが好きな人にはキッズ・プログラミングスクールの講師の仕事もおすすめです。
 最優先で探すべきなのはITエンジニアとして就職したい会社のインターンの募集です。インターンを成功させれば就職活動にもつながります。なお、学生歓迎の情報系アルバイトの中には、IT事務、データ入力やコールセンターの様な職種もありますが、あまりITスキルは発揮できないでしょう。

副業

 社会人だと社内副業でのデジタル変革(DX)プロジェクトへの参画のほか、ライター、プログラマー、コンサルタントや講師の請負を手始めに副業として個人事業に発展させることもITスキルを活かすよい方法です。
 社内で副業が斡旋されている場合にはその制度を利用すると許可申請をしやすいです。副業が許可されていてもそのような制度がない場合には、知り合いから仕事を紹介して貰うか、インターネットで一般公開されている副業やフリーランス向けの仕事情報を探して応募する方法があります。

異動・転職

 人生の時間は限られています。嫌々する仕事の時間は特に長く感じられ、疲労するものです。資格を取っていればスキルや適性の証明になるので上司や人事部に相談して希望の職種への異動を交渉します。
 ビジネスの世界では一般に抽象度の高い業務が高度な仕事であると認識されているので、ITの場合にはコンサルタント、ITサービスやアプリの企画、提案、計画、導入、プロジェクト管理が年収の高い仕事です。サーバ構築・実装、プログラミング、Web作成(HTMLコーディング)、ITサービス運用、インストラクター、カスタマーサポートのような実務系の仕事は年収が低めです。実務系の仕事はITスキルとして身につけておいたほうがよいものばかりですが時間がかかる割に規模が拡大できないのでそのポジションの業務を長く続けてはいけないと考えておけばよいです。職務経歴にプラスにならないので長くても3~5年でジョブローテーションしないようなら異動希望を出したほうが将来に繋がると思います。異動希望も通らないようであれば積極的に転職活動をすることをお勧めします。

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個別ITスキルを深める

 自身の専門性を発揮する分野を決めて個別ITスキルを深めます。ITスキル標準(ITSS)のレベルや組織の人事・職能等級を高めることや上位の情報処理技術者試験の合格、ベンダー資格の取得を目指します。

ITSSのレベル上げ

 ITスキル標準(ITSS)ではビジネス貢献として、レベル1~7の達成度指標を定めています。11職種それぞれの指標が公開されており責任性、複雑性、サイズ(プロジェクト規模)、プロフェッショナル貢献が要素となっています。概ね公務員の情報部門や日系の大企業のITスキルの到達度もこれに沿ったものになっています。要員数で規模が図られており、大きなプロジェクトに参加することでより上位のレベルに判定されるように出来ているので、中小企業やスタートアップには適合しにくいです。

例: プロジェクトマネジメントの達成度指標
   レベル7 サイズ「管理する要員数がピーク時500人以上または年間契約金額10億円以上」

 コンサルタントやプロジェクトマネージャーとして大規模な案件に参加して高年収を目指すには、ITスキルのみでは不足します。業務スキル、業界知識などIT以外のスキルを組み合わせて強みを発揮する方法があります。ほかには自分自身を商品としてとらえて、所属組織を通じて市場に広く認識されて高く買ってもらえるようにマーケティング、宣伝活動する、つまりパーソナルブランディングすることです。次項の「ITスキルを発信する」にて深堀します。

上位の情報処理技術者試験の合格を目指す

 ITスキルの基礎を学んで身につけたら、学業や仕事と並行して対外的な証明になるように情報処理技術者試験の合格を目指します。ITパスポートの後は、基本情報、応用情報を目指すのが王道です。そのあとは高度情報処理技術者試験は各試験区分の概ね合格者の平均年齢までに取得することを目標にします。過去問をまずは1年分解いてみて合格点を超えているかを確認し、合格できそうなら申込みをします。合格が難しそうなら点数の少ない分野の勉強して更に数年分の過去問を解いてみます。
 ITパスポート、基本情報処理技術者試験まで合格出来たら手を緩めずに応用情報や上位試験である高度区分の試験に挑戦することをお勧めします。年1回あるいは2回しか受験するチャンスがないためです。 応用情報技術者試験、又は高度情報処理技術者試験、情報処理安全確保支援士試験のいずれかに合格してから2年以内に、高度情報処理技術者試験のいずれかを受験する場合に当該試験の午前I試験が免除されます。
 ちなみに情報処理安全確保支援士試験は更新があるので異なりますが、情報処理技術者試験の合格は一生有効なものです。この後紹介する他の国家試験の免除として旧資格区分の合格も効力があります。取れるときに取っておきたいものです。

他の国家資格の取得も狙う

 高度情報処理技術者試験区分に合格すると、他の国家試験の情報技術系科目の免除が受けられます。1科目分試験を受けずに済ませられるのでその分を他の科目に割り振れて有利です。そのほか情報処理技術者試験の合格は国家公務員および地方公務員の採用条件・階級評価になる場合があります。

例1:【中小企業診断士の場合】一次試験の「経営情報システム」の科目免除
次の区分の情報処理技術者試験合格者 (IT ストラテジスト、システムアーキテクト、応用情報技術者、システムアナリスト、アプリケーションエンジニア、システム監査、プロジェクトマネージャ、ソフトウェア開発、第1種、情報処理システム監査、特種)

例2:【技術士(情報工学部門)の場合】
情報処理技術者試験の高度試験(平成 21 年度から実施)合格者又は情報処理安全確保支援士試験(平成 29 年度から実施)合格者が情報工学部門で受験 ⇒ 専門科目(情報工学部門)が免除
<高度試験>
・ITストラテジスト試験
・システムアーキテクト試験
・プロジェクトマネージャ試験
・ネットワークスペシャリスト試験
・データベーススペシャリスト試験
・エンベデッドシステムスペシャリスト試験
・ITサービスマネージャ試験
・システム監査技術者試験

例3:【弁理士の場合】
弁理士試験の選択科目「理工Ⅴ(情報)」が免除される
ITストラテジスト試験
システムアーキテクト試験
プロジェクトマネージャ試験
ネットワークスペシャリスト試験
データベーススペシャリスト試験
エンベデッドシステムスペシャリスト試験
ITサービスマネージャ試験
システム監査技術者試験
応用情報技術者試験
情報セキュリティスペシャリスト試験
システムアナリスト試験
アプリケーションエンジニア試験
ソフトウェア開発技術者試験
テクニカルエンジニア(ネットワーク)試験
テクニカルエンジニア(データベース)試験
テクニカルエンジニア(システム管理)試験
テクニカルエンジニア(エンベデッドシステム)試験
テクニカルエンジニア(情報セキュリティ)試験
情報セキュリティアドミニストレータ試験
上級システムアドミニストレータ試験
システム運用管理エンジニア試験
プロダクションエンジニア試験
マイコン応用システムエンジニア試験
第一種情報処理技術者試験
情報処理システム監査技術者試験
特種情報処理技術者試験
オンライン情報処理技術者試験

上位のベンダー資格の取得を目指す

 実務のプロフェッショナル、ベンダー製品のスペシャリストとして活躍していく道を選ぶなら、該当の製品・サービスの上位ベンダー資格を取得したいです。世界で数人しか持っていないようなレアな資格を取って、製品のエバンジェリストやコンサルタント、トレーナーとして極めて行く道もあります。

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ITスキルを発信する

 IT系の学校の卒業や資格取得でITスキルを持っていることを対外的に証明することができます。しかし、そのような人は他にもたくさんいます。保有するITスキルを発信して知名度を高めていくことで差異化します。
 就職や転職の際にITスキルを発揮した成果として、オープンソースのコミュニティでの活動実績があると国内外から高評価を得られやすくなります。オープンソースのソフトウェアの開発に参加することや、フリーソフトを作成して発表している場合には実際に成果物を見せることができ、自身の技術力を示せることが強みです。技術系のWebサイトやブログでの発信も評価される傾向にあります。

 転職の際に年齢や希望年収が高ければ、求められる能力も高くなるので保有しているITスキルの高さに説得力を持たせられるかがカギになります。インターネットで検索すれば活動状況は調査できるので盛りすぎて実在しない架空の実績を上げるのはダメです。

 エンジニア系の役員、最高技術責任者(CTO:Chief Technical Officer)を目指している場合には自分の持つ専門性、経験や技術を魅力的に見せて、価値を知ってもらえるように発信するスキルも必要です。具体的にはパーソナルブランディングであれば企業の看板を背負って政府の分科会、学会、業界や分野のコミュニティーを形成して活動することです。一方、所属組織から離れて個人の活動として自らをブランディングする方法としては、SNSでインフルエンサーとして影響力を発揮する、動画配信、セミナー開催/サロン主催、書籍の出版などいろいろなセルフブランディングの方法があります。認知度獲得を急ぐあまり、過激な発言や道徳的に問題のある行動で炎上するようなことは避けなければなりません。世間の見る目は大変厳しくて個人の見解を述べただけのつもりでも所属組織のイメージ低下やおかしい人認定は早く、そして長く尾を引きます。

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更新履歴

作成日:2023年07月28日 (執筆:SENRI)
その他:新規作成

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