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パソコン購入・見積もりのテクニック

安くて いいPCを買うには

 情報システム部門や購買部門の担当者であれば、購入先にいくつか懇意にしている販売業者があると思います。現在もその業者と取引するのがベストなのかどうかは、メーカー直販サイトとPCショップの見積もりも取ってから考えてほしいのです。

 10年、20年来の付き合いの業者にすべてお任せというのでは、無駄なコストがかかってしまうのは明らかです。必ず複数の業者に見積もりを依頼して、見積もりを比較・検討して購入を進めたほうが良いでしょう。特に上司や経理・購買部門が執拗にコスト削減や値引き交渉に熱心な場合は、いかに業者と交渉・商談を自分が行ってきたのかきちんと説明できなくては仕事が進まなくなってしまうこともあります。

HP Spectre x360 14-ef
写真は HP Spectre x360 14-ef 製品紹介より

各フェーズのポイントを掘り下げて説明します。

パソコン選定から購入・見積もりの流れ
選定 Windows PCはコモディティー化しているのでメーカーが違ってもIntelやAMDのプロセッサー、メモリ、SSDの種類・容量が同じならどこのメーカーも大体同じです。付加的なサービス、例えば大規模な管理に向いている仕組みで特長を出そうとしています。
予算 選定した製品をベースに予算を獲得します。台数と金額が主要なパラメーターです。PC入替や従業員の変動数を考慮します。
見積 各メーカーごとに代理店があった名残で商社ごとに得意なメーカーがあります。また、購入規模(価格、台数)に応じて値引き率が変わりますが買い方を工夫することで高い割引率を獲得することも可能です。
比較検討 選定時に第一候補になった製品以外も見積を取得して比較検討する、あるいは複数の製品を採用すると従業員の満足度が高まります。特にPCにこだわりのあるエンジニア層への受けが良くなります。
トータルコスト 保守契約や保険の契約をする場合にはトータルコストを算出します。紛失や盗難までカバーするかは過去の事故の発生状況を考慮します。
おまけ 機動力がある企業だけが恩恵にあずかれる訳アリ激安品についてとその他の注意点です。



選定

 パソコンの機種選定においてまず大きな要件として、執務フロアや会議室といったオフィス事情やハイブリットワーク(出社とテレワークの併用)を考慮します。具体的にはノート型のモバイルも可能な機種にする、あるいは動画制作や設計開発(CAD)用途ではパワフルなタワー型のデスクトップPC、持ち出し禁止の情報を取扱うために強固なセキュリティの備わったPCといった点です。
 ハイブリットワークの出勤形態ではフリーアドレスのオフィスにしてデスクに液晶モニタを配置し、USB-Cケーブル1本でノートPCの画面出力と電源供給をするというスタイルが好評です。この場合はUSB-C PD(Power Delivery)という給電規格、DP Altモード(DisplayPort Alternate Mode)という映像入力/出力に対応した液晶モニタとPCが要件になります。
 処理速度が要求される場合にはデスクトップ用のCPU、GPUや大容量のメモリ、ストレージが欠かせません。高性能なものは電源容量、冷却の関係で大きな筐体になります。このような業務用途には固定席を用意して、設置スペースを確保し、配電盤から大電流を通した専用の電源コンセントも備えます。

ポイント
  • ハイブリッドワークを考慮したノートPCをメインに検討。特定業務用途に適合するデスクトップPCも検討する。
  • PC選定における注目の規格はUSB-C PDDP Altモード。ACアダプタや映像出力の規格を統一できる。

予算

予算獲得

 選定した製品をベースに予算を獲得します。従来からビジネスPCは半期もしくは年単位でモデルチェンジしますが、通常は同価格帯で後継商品が販売されます。ですから、予算を決める際には台数と金額が主要なパラメーターになります。購入対象のPC入替や従業員の変動数を考慮します。デジタル時代の今、競争力の源泉であるIT機器にお金をかける必要性を予算決定者へ根気よく説明します。

予算の削減への対処

 予算が削減されてしまい選定した機種を予定のスペックで購入できなくなることがありますが、CPUグレードやメモリの低グレード化は確実に性能が低下します。
購買の価格交渉で乗り切るのが最善策です。
 例えばCore i5で選定したのに予算が足りないのでCore i3にしたという場合、演算器が12コアが6コアになりアプリの実行時に同時処理数が半減するので内部的な待ちが発生して遅くなります。近年ノートPCのメモリは増設できない機種が増えているので4GBや8GBで購入するとアドビ Illustratorのような16 GB以上を推奨したアプリを満足に使うことができません。
 日本ではライセンスやセキュリティ上の理由で私物PCの業務利用を禁止している会社が多いと思いますが、会社支給のPCの性能が低い場合にエンジニアやクリエーターの離職につながるので注意すべきです。デジタル人材に関しては他社でも通用するできる人から辞めてしまいます。

見積

各メーカーごとに代理店があった名残で商社ごとに得意なメーカーがあります。また、購入規模(価格、台数)に応じて値引き率が変わりますが買い方を工夫することで高い割引率を獲得することも可能です。

予算取りの時の見積

 メーカー直販サイトのオンライン見積や主要な取引先のメーカー代理店で見積を取得します。見積の有効期限は1か月程度のことが多いです。代理店の営業担当者から対面で見積をもらう場合には予算獲得前の見積であることを伝えおく方が購入時に再度見積書を発行してもらう際もスムースです。

購入時の見積もり

 代理店の営業担当者には自分が発注者で権限があるのか社内の別の権限者から発注するのかをそれとなく伝えます。組織が大きく購買部門を通して購入する場合には再度価格交渉が行われたり、別の販売代理店へ見積が行われることがあります。購買部門の立場としては自分たちで価格交渉して安く調達することがミッションですからその点を考慮します。自分がIT部門の担当者だったら親身に対応してくれた代理店であれば購買部門へその代理店を推薦しておきます。
 代理店がベストな見積を出してくれたのに購買部門がとにかく値切りしろと一本鎗だったと代理店の営業から苦労したという話を聞いたことがあります。数万台とか大規模であれば代理店からメーカーへ特別値引きの交渉もしやすいでしょうが、小規模の発注だと大変なのは想像できます。

安い見積はいつ出る?

 メーカー、商品の特性にもよりますが大体安い時期は決まっています。
いつ買えば安いのか、整理しました。

  • メーカーや業者の決算時期(営業担当者の成績集計期間の最後の頃)
  • 商品の販売キャンペーン時(業者へのバックマージンUPや提供価格(仕切り価格)の引下げ時)
  • メーカー各社がシェア争いで拡販しているとき [相見積もりで競わせる]
  • 商品の終盤(後継機種の発表時)
  • 不人気商品化したとき(ライバルメーカーが低価格で高性能な機種を発売したなど)
  • 年度末や年末など決算時期

 複数の業者に見積もりで競争させると安くなります。いくつかの業者の見積り額で、1社だけ異常に安いところとがあったら要注意です。
 条件や何かあるかもしれません。(実際に業者さんの中には、初めて声を掛けてもらった場合などには、取引実績作りのために強烈に頑張ることもあります。下位モデルと取違えといった単純ミスということも稀にあります。)
  • 国内販売モデルではなく廉価な海外モデルになっている。(並行輸入品)
  • Office365などのライセンスの契約が条件になっている。(セット価格)
  • その業者に運用保守をアウトソースしなければいけない。(ひも付き)

比較検討

見積書のチェック

 対面や電話では見積を依頼する際に伝達ミスが起きやすいので見積書をしっかりと確認します。

  • 有効な見積書かどうかの確認
  •  業者の社印や担当者名の記載があるかどうか、見積もり書の発行番号や発効日は記載されているか、見積書の有効期限は切れていないか(通常1ヶ月程度)

  • 発注する予定の商品は漏れなく記載されているかどうか
  •  不正が疑われやすい「コンピュータ一式」のような構成があいまいな見積の記載は避けます。型番や数量の誤りがないか確認します。コピーアンドペーストで商品を記載して見積書を作成しているときに発生しがちなのが転記ミスです。
     型番を記載せずに仕様のみを記載して、海外販売モデルの並行輸入品を納入する業者もあるので要注意です。メーカー保証や保守修理時に問題になることがあります。

  • メーカー定価、提供価格、値引率、値引き額などについておかしなところがないか
  •  直近にメーカー標準価格が改定されているのに改定前の高い価格から値引をして値引率を大きく見せていることがあります。
     オープン価格の製品についても業者が定価を決めて値引額・率を記載して安いイメージを演出することがあります。定価も含めて正しい金額かチェックして、値引率も念のため計算し直します。

  • 価格が異常に安い or 高い
  •  金額の0の付け過ぎ、欠落といった単純ミスのほか、同等仕様品の場合もあるので確認します。
     ビジネスPCの場合にはOfficeアプリや付属品が無いモデルを選択してしまっていることがよくあります。また、液晶ディスプレイのような映像製品は同メーカーの同サイズの商品でもパネル品質や解像度の違いが顕著に出ますので型番まできちんと指定してトラブルを避けます。

  • 付随するサービス、追加料金の確認
  •  送料や設置・セットアップ料金、操作指導料、保守料金などは含んでいるかを確認します。1台あたりなのか1注文あたりなのかも確認のポイントです。後日、納品時に送料やセットアップ料金が現金で請求されてしまったといった誤解や混乱が無いようにします。
     機器購入の予算に余裕があるならサポート保守契約をパック料金で含めておくと後々故障したときに追加費用を工面する必要がないので面倒がなくてよいです。なお、指定業者に設置・設置アップを依頼しないと保守が受けられないなど制約がある場合は特に注意が必要です。
     1年保証が3年に延長されるような「無料キャンペーン」などで提供されるものについても品名に「延長3年保証」や金額「\0」で項目に記載してもらうと良いです。

  • 支払い方法、期限
  •  自社内のルールや経理部門の意向で支払方法に決まりがある場合は購入契約を締結する前に相手の業者と調整します。当月一括払い、翌月一括払いなど
     決算期を跨ぐような支払い処理についてはトラブルがおきやすいので要注意です。(検収日や支払い期限などでもめることもあります。)

  • 納品方法、納期
  •  納品場所、納期を確認します。納品の受け入れや検品の準備をします。パソコンのセットアップをアウトソーシングしている場合には、その担当者と納品時の作業を調整をしておきます。

  • 備考、その他
  •  見積書に小さい字で書かれていることの多い、備考などについても目を通しておきます。
     返品の条件、初期不良時の対応が交換なのか、修理になるのか、等

見積書を比較する

 メーカーも代理店も違えばスペックや取引条件はそろいません。一律に比較できるように製品や見積書のそれぞれの項目をポイント化します。製品の選定根拠として説明できるようにしておきます。

メーカー・製品の選定、購入先の決定

 ポイント化した見積書を検討して発注先を決定します。

トータルコスト

バッテリーの交換

 ノートPCをバッテリー稼働で使用する頻度が多い場合にはパソコンの法定耐用年数4年以内にバッテリーが劣化してしまうことが考えられます。性能維持のために必要な保守・修理費用としてバッテリー交換の費用を見込んでおきます。

修理費用、廃棄費用

 使用年数を予め決めておき使用中の故障に対応するための修理費用や代替機として使えるように予備を保有しておくコスト、そして廃棄の費用も考慮します。
 使用環境にもよりますが日本ではPCは大切に使う人が多いので4年程度ではまだまだ十分に使用できます。人気のある製品を選んでおけば廃棄ではなく売却してリサイクルに回すことも可能になります。

おまけ

訳アリ激安品とその他の注意点についてです。

他社キャンセル品

 情報通信機器の商社やメーカーとある程度取引があると特定の要件に不適合となってキャンセルされた商品の案内をもらえることがあります。過去にあった事例では、先行導入されたPCがその会社のネットワークとの接続が安定しないために注文すべてがキャンセルされたということがありました。ネットワーク機器との相性が原因と考えられるため、自社では全く問題にならないならこのようなPCは大変お得です。台数や仕様が合致していれば買い付けるのもありです。
 Windowsのエディション間違い品は意外に厄介です。Home Editionは家庭向けなのでWindowsドメインに参加できなかったり、暗号化やリモートデスクトップ機能に制約があります。Home EditionからProやEnterprise Editionへマイクロソフト Windowsのボリュームライセンスを購入してOS Editionの変更をしなければならず手間と費用がかかります。
 大量のキャンセル品はどこも引き受ける会社がない場合にはアウトレット品として小売りするため個人向けのマーケットへ放出されることもあります。頻繁にPCメーカー各社のECサイトをチェックすると見つけることができます。

廃番品

 ビジネスPCの筐体デザインは3~4年周期でガラッと変わります。新しいCPUの熱設計の変更に伴う機構的な要件に合わせるためです。各メーカーは半期、年単位に新製品を発売しますが1~2年程かけて何度かに分けてPCを入れ替える組織に対応できるように毎期にデザインを変えることはしていません。
 メーカーPCの筐体デザイン変更時やラインナップの統廃合に伴ってシリーズ製品が終売になるときには廃番品がとても安くなることがあります。従来からその製品を導入していたら追加のチャンスです。単発で購入する場合には、他の従業員との格差を生じることがある点、対面の業務では古い印象を与えかねない点に要注意です。

その他

 初めてお付き合いをする業者さんだと、「いきなり見積書をくれ」と言ってもくれないことがよくあります。きちんと相手の担当者と商談を進めて、改めて見積書をお願いしてみてください。取引に当たっては双方で与信、取引口座の開設などの手間がかかるので相見積だけ取ろうとされているのが分かると敬遠されてしまいます。
 商流・系列などが理由ですが業者ごとに得意なメーカーがあります。きちんとしている業者であれば不得意なメーカーでの見積もりを依頼された場合に、どのような目的に利用するのかをヒアリングして提案書や別のメーカーの同等性能の機種で見積書を作成してくることがあります。そのときには、中身の精査はもちろん、どんな身魅力的でもそのメーカーを買ってよいのかをきちんと確認してから購入手続きを進めます。

 日本固有の"しがらみ"は注意しなければいけません。購買部門で特定の業者への商流が決まっている(PC単体で見ると高くても何か条件がある)、親会社の提携先とはライバル会社だったとか、パソコンの社内ヘルプデスクをアウトソースしている会社ライバル会社だったとかだと、せっかく安く買えても、社内でトラブルになったり、気まずくなったりしてしまいます。



更新履歴

更新日:2023年01月20日
作成日:NX-Station前サイトから移行
その他:内容をリフレッシュしました

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